愛があるから生きていける

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遺書。

これを君が読んでいる頃、
私は死んでいるだろう。

死んでいるだろうか?

なあ、これを読んでいる君が決めてくれないか?
私は 死んでいるだろうか。

感情がなくなればいいと。
誰かのくだらない言葉遊びに笑い転げることあれば
子供の頃 鉄棒を回れずに落下した時のような
頭を打ち付けたような 恥と悲しみと痛みが襲うのだ。

ガラスの壁に あまりに透明なガラスの壁に囲まれて、
走り出せると地面を蹴ったそばから
額を、鼻頭を、自身で予期せぬような強力さで打ち付ける。

うずくまっているほうが、重さを感じずに済むのだ。

人から暖かい温もりに近い何かを得たところで、
私はそれはすべて すべて 覚えていられないのだ。

口の中に、 自身の身体の中に取り込むと
言いようもない快感に満たされて それはそれは幸福で
ああ、その時ばかりは 私は人から「人間」と呼ばれる。

まるで、ガラスを隔てたこちらと向こうで、掌を合わせるような。

だが、そう。一時の安らぎを得たところで
私はすぐ空腹に喘ぐ。

私に振舞ってくれた料理も、
私の好みでなければ意味はないのだ。
申し訳ないが、後程トイレで吐いている。

死んだほうが、いいんじゃないだろうか?

知恵など。
知識など。
哲学?
心理学?
そんなに食い荒らして、いったいどうするんだ。

目が見えないほうがよかっただろう。
耳が聴こえぬほうが、ずっとましだった。

優しい言葉を、たくさんくれよ。
いくら払えばいいんだ。
全然、全然足りないんだよ。

生きていくためには、目の前がちかちかして
喉が干からびて手が震える この・・・・・・
これが止められるのは、

受け入れられるしかないんだ。

犯罪ではないのは、これがなければ
人間なんて全滅してしまうからだ。

死ぬのはひどく面倒くさい。
生きているのだって、惰性。

憂鬱だ。

憂鬱。憂鬱は空腹の合図だ。

産み落とされ、完成することなく死ぬ私は
意味もなく喜び悲しみ苦しみ怒り。
勝ったや負けたや、優越や後悔も。
よくある嫉妬も、妬み等でさえも。

潮の満ち引きで襲う躁鬱の
息ができずに白目を剥く。

苦しんだふりは、こんな生き方でだいぶ様になってきたんだよ。

ほら、この笑顔も、好きになってくれるだろう?

何もかも 歪んでいくのは
人のせいにはできないだろう?

そうやって、なんでもかんでも愛といい
なんでもかんでも 好きだといって

私はそれで いともたやすく救われる程に
もっと欲しい もっとくれと。

合法。
安心していい、これは合法だ。

簡単にあげられるものなんだ。
欲しいなら教えてくれれば私も君に与えられる。

ああ、これを読んでいる君よ。
私のようになってはいけない。

生きていることが楽しい時もあった。
でもそれは、LSDだ。

努力して報われる時もあった。
それもたぶん、フェンタニルだ。

達成感で満たされて、心が通じ合って
笑い合って、愛し合って、励まし合って、泣き合って。
なんて私はこんなにも、幸せなんだろうか。

でもそれは、一体どこが違うんだ。
合法であるだけだ。
そうじゃないか?

君が愛しくてたまらずに、
君の計算高さも、自虐に酔いつぶれるのも、
時折のぞかせる金色(こんじき)の瞳も。
君の吸ったケムリが煌々(こうこうと)昇ってっていく空の青さも。

この世が君を受けれなくても、
寂しい、と煩わしくすり寄ってくるのも、
君が口を大きくあけてくれさえすれば
鼻を近づけてくれれば
腕を差し出せば
足の指の間を広げて捧げるだけでいい。

だから、どうか、私の代わりに
穏やかであってくれ。

これは合法なんだから。

笑おうとおもえば、無限に笑える。
泣こうとおもえば、無限に泣ける。

君が私を逃がしてくれないなら、
今夜も眠れますように、と目を閉じても
明るい夢をみることができないならば

この心臓が動くのは、私の罰か。

その時が訪れた目覚まし時計は、
耳障りなこの鼓動は、止めなければ迷惑だろうと。

私が死んでいるなら、それは愛だ。
私が、君を嫌いなのも愛だ。
私が、君が、自身を傷つけるのだって、これはもう、愛としか言えない。

善い人生だった。

君はいつだって頑張っているよ。
今は、とても、もしかしたら死にたい程につらいかもしれないが、
これがあれば君は大丈夫だから。

まだ君は、生きていける。

生きていけば、君がまだ目にしていないような
耳にしていないような素晴らしい世界が待っているよ。
スリリングで、刺激的な。

思い出に助けられて、思い出に縛られて、
死ぬまでどんどん、枷が、鎖が、重りが増えていく。

その旅に、 その度に、
言葉の麻薬は量を増して、
そうして、
そうして、

ああ、幸せを感じるのが怖い。
喜びを感じるのが怖い。

ずっと飲み続けて。
ずっと食べ続けて。
ずっと舐め続けて。
ずっと打ち続けて。

カフェイン飲んで、化け物になろうか。
翼が生えたら、撃ち落としてほしいな。

死ぬ間際くらい、人間として生きる呪縛から。

心臓が、動く血が、脳みそが。
人は簡単に死ぬものなんだ。

もう休ませてくれよ。

君がいないと生きていけないのに。
君はもういないから生きていけないんだ。

ああ、この絶望が、生きるか死ぬかを考えるこの時間が
私はやめることができないのさ。ずっと。
私はどんな感情もきっと、快感に変えているのさ。

なあ、私はもう、死んでいるだろうか。