私は言葉が嫌いだ

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言葉は多い方が良いか。
言葉は少ない方が良いか。

言葉は何よりも鋭(するど)く、心を抉(えぐ)る。
自分を守るために、縫い合わせ、纏(まと)った言葉達も、
この鈍(にぶ)く微笑む凶器の前では、
一瞬でも私を守ってはくれなかった。

私を傷つける言葉は、
私が傷つける言葉は、
拒絶(きょぜつ)の言葉。
否定(ひてい)の言葉。
嫌悪(けんお)の言葉。
怒(いか)りの言葉。
疑惑(ぎわく)の言葉。
曖昧(あいまい)な言葉。
失望(しつぼう)の言葉。

私を守る言葉は何だ。
私はまだ若いから。
私はもう若くないから。
私はまだ未熟だから。
私はもう衰え始めているから。
私はどうせ弱いから。
私はどうせ馬鹿だから。
私には勇気がないから。
本気じゃなかったから。

空が泣いている。
海は荒れている。
山はうるさい。

可愛くて、格好よくて羨ましい。
その優しさの裏で貴方は何を考えている?
私は貴方の何番目なんだ。
奇遇だね、私も嫌いだ。
なぜ暖かい事を自慢げに話すんだ。
なぜ私にはそんな冷たい反応をするんだ。
努力して手に入れた美しさはさぞ気持ちいいだろう。
本当に自分の心が醜いと思っているのか。

貴方はとても可愛い。
貴方はとても優しい。
貴方が好き。とても。
貴方が嫌い。とても。
貴方はとても暖かい。
貴方はとても冷たい。
貴方はとても美しい。
貴方はとても醜い。

全然足りない。
私がどんな言葉を並べても
貴方は振り向いてくれないじゃないか。

私がどんな言葉を贈っても、
貴方は受け取った振りをするんだろう。

言葉にしなきゃ伝わらない事があるだろう。
言葉にしたら伝わらない事があるだろう。

貴方が真っ当に諭(さと)す言葉が、
貴方が真剣に語(かた)る言葉が
貴方の鋭い指摘(してき)の言葉が、

こんなにも私の心に刺さるのは、
私の心が強くないからか。
そうやって疑問を投げかければ、
私の心は強くなるのか。

私は言葉が嫌いだ。
言葉を繋げば繋ぐほどに、私は弱い。
言葉を減らせば減らすほどに、私は自信が無い。

私は言葉で傷ついて、
私は言葉で傷つけて、

私の怒りは
人に理解されれば収まる怒りだ。

私の悲しみは
人に共感されれば消えていく悲しみだ。

本当は馬鹿なヤツだって思ってるんだろう。

正直ちょっとガッカリした。

なんでそんな言葉が使えるんだ。

君がそんなこというなんて思わなかった。

君なら私の本当の言葉を
わかってくれると思ってたのに。

私なら私の本当の気持ちを
言葉に出来ると思っていたのに。

可愛い。
優しい。
好き。
嫌い。
暖かい。
冷たい。
美しい。
醜い。

使う言葉は同じなのに、
あなたに言われると辛い。
あなたに言われると悲しい。
あなたに言われると苦しい。

使う言葉は同じだけど、
あなたは辛いだろうか。
あなたは悲しいだろうか。
あなたは苦しいだろうか。

私は、あなたがいってくれるから嬉しいはずなのに。
私は、あなたにいわせてしまったから後悔する。

この空が色を変えるのは、
この海が色を変えるのは、
この山が色を変えるのは、

…そんなのはどうでもいいんだ!

私は言葉が嫌いだ。
私は自分の言葉が嫌いだ。

言葉はどこまでもひろがる空のように
言葉はどこまでもふかい海のように
言葉はどこまでもおおきい山のように

そうやって私は自分の言葉をヤスリにかけて
私の心に深く突き刺すのだ。
私の言葉を忘れないように。
次はもっと。自分の言葉を好きになれるように。